何かを買わせたいと思う時、重要なのは、
「自分が何に対して金を支払っているのか」をあいまいな状態にさせることだ。

たとえば、映画。
普段意識しないが、映画というのは通常、その内容に対して金を払われてはいない。
だって僕たちは、中身を観る前に支払いを済ませるのだから。
面白くなかったからといって返金されることはないし、
チケットを買ったけど劇場に入らなかったと窓口で相談してもきっと基本的には応じてもらえないだろう。
だからこそ、クチコミサイトなどで、その感想の中に「ネタバレ」が含まれているのかを皆ものすごく気に掛けるのだ。
結局何に対して金を支払っているのかといえば、
僕らは「期待値」に対して消費をしている。
広告を観て、面白そうだと思う。
金を払う価値があると感じる。
それがそのまま行動に結びついている。
楽しみにしていて観た映画が、期待外れだった場合を思い出してほしい。
文句を言う場合もあるだろうが、
「でも面白かった」
「一周まわって面白かった」
という感想を言い合ったりしなかっただろうか。
これは、自分が無駄な金を使ったことをどうにか正当化しようとする心の動きによる。
「その映画を観る」という自分の行為が失敗だったとするよりは、感想を無理やりにでも好意的なものに変えた方が、損失を軽減させることができるからだ。
金を払った時点で、すでにある程度の高評価は約束されていると言えるのだ。

僕がやっているビジネスの基本は、
そういう人の気持ちを利用している。
支払った金額が大きければ大きいほど、その結果を好意的に解釈するようになる。
いつの時代も高いものが売れるのはこの作用による。
だから、あるコミュニティでうまく立ち回りたいときは、出来るだけ沢山の人にお金を出してもらうといい。
それも、有形商材ではなくて、無形商材であることが望ましい。
僕の場合は主にメールを販売しているが、この売り方にも少し工夫をしている。
単体の値段ではなく、基本的には何かとのセット販売にするのだ。
今後の企画に関する発言権だったり、エキストラ出演の権利の時もある。
実際にそれを使うかどうかは関係ない。
頭のどこかで、その人が「僕という人間に対して金を使った」と錯覚してくれることが大事なのだ。
金を稼ぐのが上手な人間は金をつかわせるのが上手な人間だ。