僕の場合、どれだけ沢山の綺麗な女の子と、どれだけ深く仲良くなれるか、ということが仕事の成果に直結しています。深く、とはいっても売れそうな相手の場合、手をつけるようなことはしません。同業者の話を聞いていると、皆、平気で仕事の女の子と寝たりしていて、びっくりします。そういう点では、僕は完全にクリーンです。まあ、その分というかなんというか、プライベートはけっこう乱れていますが(笑)。
なんで? と、よく聞かれます。Kさん、インポなんですか、とか。なんであんなに綺麗な子たちと毎日のように会ってるのに、変な気を起こさないでいられるんですか、と。実はこっそり食っちゃってるんでしょ、とかね。我慢できるわけないでしょ、と、彼らはいう訳です。
あのね、僕からすれば、我慢できるに決まってるんです。
だって、彼女たちは商品なんだから。

たとえば、有名なお菓子屋さんがあったとします。毎日そこそこお客さんも来るし、新商品の売れ行きも順調。そこにあなたがやって来ました。いい匂いにつられて、ふらっと入ってきたようです。小ぢんまりとした店舗ですが、内装の趣味は良く、色とりどりのお菓子が陳列されたショーケースは綺麗に磨かれています。あなたは、この店はアタリかもしれないと考えます。二つか三つ、お土産に買って帰ってみよう。
どの商品を買おうか悩んでいると、奥から、菓子職人がふらりと顔を出しました。彼はお客さんであるあなたへの挨拶もそこそこに、ショーケースに入っていたお菓子を手づかみで取り出し、もりもりと食べ始めました。あなたはびっくりして、なぜそんなことをするのかを問いただします。「だって、こんなおいしそうなお菓子を毎日見ていたら、我慢できないでしょう」と彼は答えました。
……どう思いますか?
最悪ですよね。
先程まで魅力的だったはずのお菓子が、もしかしたら急に価値のないものに思えてきたのではないでしょうか。あるいはあなたは、何食わぬ顔をして商品を買って帰るのかもしれません。そうして、こんなことがあったと友人知人に言いふらすのかも。ひょっとしたら、その菓子職人に対して「正直な人だなあ」と好意を抱くこともあるのかもしれませんね。職人すら我慢が出来ないぐらい、魅力的なお菓子なんだ! と、評価を上げることも考えられます。
でも僕は、この行動にはリスクの方がでかいと思います。お菓子も女の子も、清潔感というのがすごく大切ですから。それから、人間の欲望の殆どはイメージに支配されています。お皿に盛って紅茶と一緒に食べるイメージ、手づかみで食べるイメージ。もちろん、どちらの食べ方にも違ったおいしさがあります。ただし僕に限って言えば、より高く売れる方を選ぶだけです。
経済的に成功したいのであれば、これはけっこう重要なポイントです。岐路に立たされた人間は「自分らしい」決断をしようと考えがちです。ここで、個性だのなんだのを切り捨てて、ただ儲かるだけのルートへ舵をきれる冷静さ、ある意味での「つまらなさ」を持てる人間だけが、成功できます。
覚えておいてください。お金を儲けたいのであれば、「あなたらしさ」という不衛生な価値観は早い段階で捨てるべきです。
そういう訳で、僕は、商品にすると決めた女の子には絶対に手を出しません。綺麗な女の子と仲良くなりたければ、その子をプロデュースすることで儲けたお金を使って誰かを口説けばいいだけの話です。お客様感覚の抜けない事業主はキケンだと、僕は思っています。